Story
私たちがチーズを作る理由
THE MILK
01
日本の乳牛全体の、わずか0.8%。 体が小さく、搾れる量はごくわずか。
それでもジャージー牛でなければならない理由は、 ひと口で違いがわかる、
その圧倒的な「濃さ」にあります。
ほんのり金色を帯びたミルクは、 古くから英国王室でも愛された「ロイヤル
ミルク」。
ホルスタイン種のミルクに比べ、 乳脂肪分は1.3倍、無脂乳固形分は1.2倍。
まるで生クリームをそのまま固めたかのような 濃厚なコクと、胸がすくよう
な圧倒的なミルクの甘み。
寺西牧場の5頭の牛たちが、 青草の栄養を限界まで凝縮してくれた、 まさに
「奇跡のしずく」です。
LOVE
02
効率やコストを考えれば、お乳はたくさん搾れた方がいいのかもしれませ
ん。それでも、この牧場では決して最後まで搾りきることはしません。最後
まで搾ると、牛たちが痛がってかわいそうだから―。そんな彼らの想いを、
私たちはいつも大切にしています。
広大な能登の牧場に、暮らす牛はわずか5頭。家族のように名前を呼び、どこ
までも のびのびと、溢れんばかりの愛情を込めて育てています。 その健やか
な日々のすべてを、私たちがひとしずくも無駄にすることなく、チーズという
形で受け継いでいくのです。
NOTO
03
しかし、能登半島地震によりこの貴重なミルクは行き先を失ってしまいました。
「命の循環を、ここで止めてたまるか。」
被災した能登の街で、復興のために 毎日トラックを走らせていた私たちがそ
こで出会ったのは、 孤立しながらも、5頭の牛たちを必死に守り続ける 寺西
牧場のおじいちゃんの姿でした。このロイヤルミルクを、絶対に無駄にはし
ない。その決意だけで、私たちは「チーズ工房BrownBrown」という 新しい
ブランドをゼロから立ち上げました。
けれど、私たちはジャージー牛のチーズなど、 作ったことも、扱い方さえも
知らなかったのです。乳脂肪分が極めて高いロイヤルミルクは驚くほど繊細
で、 理想の味と食感に辿り着くまでには、 想像を超える失敗と、果てしない
試行錯誤の連続でした。それでも諦めず、職人が自らの手でミルクと向き合
い続け、 ミルクから生まれるホエイ(乳清)さえも無駄にしない 命の循環
を、ひとつの形にしていきました。
震災を乗り越え、職人の意地とプライドによって 艶やかな命を吹き込まれ
た、私たちのチーズ。誰も歩んだことのない道のりの先に完成させた、 能登
の復興の光となる、本物の味です。